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役員社宅で賢く節税する方法

会社経営
2025.10.03

 法人化による大きなメリットのひとつ、役員社宅による節税方法について解説していきます。

社宅と住宅手当の違い

 「社宅」とは、法人が役員または従業員のために用意した住宅のことをいいます。そのため、法人が家賃を支払い、利用者は法人へ使用料を支払います。

 一方で「住宅手当」とは、役員または従業員が借りている家賃の一部を、会社が金銭で手当することをいいます。

 これだけでは両者あまり違いがないように思えますが、実際には以下のように税金や社会保険の面で大きく違いがあります。

項目社宅住宅手当
契約名義会社(借上社宅や社有社宅)利用者本人
お金の流れ会社が家賃を負担し、利用者は「使用料」を会社へ支払う会社が手当を給与に上乗せ、利用者が家賃を支払う
税金(所得税・住民税)原則非課税(※下記に記載の「賃貸料相当額(税務上の適正家賃)」以上の使用料を法人が利用者から徴収している場合)全額課税(給与と同じ扱い)
社会保険料原則対象外(上記の所得税等が非課税の場合)対象(給与と同じ扱い)

役員の自宅を社宅にするメリット

 社宅には「借上社宅」と「社有社宅」の2種類があり、それぞれにメリット・デメリットがあります。

借上社宅の
メリット

借上社宅のメリット

 会社が住宅を法人契約で借り上げて役員に貸す「借上社宅」にすることができます。

この場合、家賃の支払いは法人の経費(地代家賃)になり、役員から受け取る使用料は法人の収入(雑収入)となります。この経費と収入の差額だけ法人の所得を下げる効果があるため、法人税の節税効果が得られます。

 また「賃貸料相当額(税務上の適正家賃)」以上の使用料を役員が負担していれば、役員に対して税金や社会保険料の課税関係は生じません。

借上社宅の
デメリット

借上社宅のデメリット

 借上社宅のデメリットは以下のようなものがあります。

・賃貸物件が対象となるため、住宅を購入する場合に比べて住宅のグレードが下がる

 (分譲賃貸マンションなどを選べば解決できる)

・法人の信用力が弱い場合は、法人での契約を断られるケースがある

社有社宅の
メリット

社有社宅のメリット
 法人が住宅を取得して役員に社宅として貸し付けた場合、その住宅を法人の資産として「土地」「建物」に計上し、建物部分を減価償却費として経費化していくことができます。

また減価償却だけでなく、固定資産税や維持費も経費になり、法人税の節税効果が得られます。これらは個人で住宅を購入しても経費にすることはできません。

 借上社宅と同じく「賃貸料相当額(税務上の適正家賃)」以上の使用料を役員が負担していれば、役員に対して税金や社会保険料の課税関係は生じません。

社有社宅の
デメリット

社有社宅のデメリット(個人所有との比較)
 住宅を役員個人で購入する場合と比較して、社有社宅のデメリットは以下のようなものがあります。

・借入をして住宅を購入する場合、個人の住宅ローンと比較して、法人の借入金利が上がり、返済期間も短く設定される団体信用生命保険の適用がない

・住宅を売却した際に、「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」が適用できない

・所得税の譲渡所得(分離課税)よりも、法人税等の税率の方が高くなるため、売却時の税負担が大きくなる

・役員の相続が発生した際に、不動産評価や特例適用による相続税の圧縮効果が得られない

社宅の使用料による課税関係

 法人が役員に社宅を貸すときは、毎月「賃貸料相当額(税務上の“適正家賃”)」以上の使用料を役員から徴収していれば、その社宅提供による“得(経済的利益)”に対して給与課税されません。

 一方で、役員から徴収する使用料が「賃貸料相当額」未満の場合、社宅提供による“得(経済的利益)”に対して役員へ給与課税されてしまいます。

 課税関係をケース分けすると、以下のようになります。

ケース課税関係
役員から社宅の使用料を徴収していない(無償提供)の場合賃貸料相当額の全額が給与課税される
役員から徴収している使用料が「賃貸料相当額」未満の場合賃貸料相当額と徴収した資料の差額が給与課税される
住宅手当を支給している場合や
賃借人が役員個人(個人契約)の場合
社宅に該当しないため、法人で負担した家賃の全額が給与課税される

賃貸料相当額(月額)の計算

 「賃貸料相当額(税務上の“適正家賃”)」以上の使用料を役員から徴収しているかどうかで、課税関係が変わるため、「賃貸料相当額」の計算は慎重に行う必要があります。

 「賃貸料相当額」の計算にあたっては、社宅の床面積により「小規模な住宅」と「それ以外の住宅」とに分け、次のように計算します。

1.小規模な住宅

「小規模な住宅」の判定

・法定耐用年数30年以下の建物:床面積 132㎡以下

・法定耐用年数30年超の建物(RC造など):床面積 99㎡以下

区分所有マンションは共用部分も按分して加算して判定します。

240㎡超・プール設備付きの住宅など一般の社宅の水準を外れる「豪華社宅」と判断される場合、

 次の算式の適用はなく、通常支払うべき使用料に相当する額が賃貸料相当額になります。

「小規模な住宅」の場合の計算式(自社所有でも借上でも同じ)

 次の(1)から(3)までの合計額が賃貸料相当額(月額)になります。

(1)(建物の固定資産税課税標準額 × 0.2%)

(2)(12円 × 総床面積(㎡) ÷ 3.3)

(3)(敷地の固定資産税課税標準額 × 0.22%)

2.「小規模な住宅」以外の住宅

・自社所有

{建物課税標準額 × 12%(※耐用年数30年超は10%) + 土地課税標準額 × 6%} ÷ 12

・借上げ

「会社が払う家賃の50%」と「自社所有式で出した額」のいずれか多い方

3.豪華社宅

 通常支払うべき使用料に相当する額を役員から使用料として徴収する必要があります。

この場合、社宅制度によるメリットはありません。

まとめ

 役員に社宅を貸与することで、法人の経費を増やして所得を下げ、法人税の節税効果を得ることができます。

 ただし、役員側で給与課税されないためには、毎月「賃貸料相当額(税務上の“適正家賃”)」以上の使用料を役員から徴収する必要があります。

 賃貸料相当額は、「小規模な住宅」、「それ以外の社宅」、「豪華社宅」で計算式が変わってきます。社宅制度を賢く利用すれば、節税に繋げることができます。

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