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消耗品費と減価償却の分かれ目と少額減価償却資産について

会社経営
2025.10.17

 消耗品費と減価償却の分かれ目と少額減価償却資産について解説していきます。

消耗品費とは

 10万円未満の備品が消耗品費になります。

1つの物品で10万円未満のものは「消耗品費」として費用とすることができ、10万円以上の物品については資産に計上して、減価償却していくことになります。

減価償却資産とは

 10万円以上の物品で、その使用期間が1年を超えて数年にわたる資産のことです。減価償却資産は時間の経過により、その価値が少しずつ減少していきます。

少額減価償却資産の即時償却

 青色申告の承認を受けている場合、10万円以上30万円未満の物品については、1年間にその合計額が300万円になるまで、その年に償却することができます。

取得価格に応じた経理処理方法

10万円未満(または使用可能期間1年未満)

 取得年度に全額経費にできます(「消耗品費」で処理することが多い)。

「10万円未満か」の判定は通常1単位ごとに行います

10万円以上20万円未満(=一括償却資産)

 一括償却資産として3年間で均等に費用化します(原則、月割り不要の“年1/3ずつ”)。

20万円以上(=ふつうの減価償却)

 通常の減価償却を行います(耐用年数に沿って償却します)。

(特例)中小・青色なら30万円未満は即時費用化も可

 1点30万円未満は年300万円まで、取得年に全額経費にできる特例制度です。青色申告の承認を受けている法人が対象です。

※いずれも貸付け用に供した資産(本業としての貸付を除く)は適用外(R4年4月1日以降)となります。

消耗品費・減価償却費・少額減価償却資産 比較表

区分判定基準会計処理の目安(勘定科目)費用化の方法・期間申告書・明細主な適用除外・注意点
消耗品費等
(少額・短期)
取得価格10万円未満又は使用可能期間1年未満消耗品費
など
取得年に全額経費特になし判定は税抜/税込の経理方法で金額が変わる(免税は税込)
貸付け用は適用外(主要事業としての貸付は除く)
一括償却資産10万円以上
20万円未満
工具器具備品(資産計上)、
減価償却費
3年間均等(各年1/3)で費用化
※月割りなし
別表16(8)等の明細添付貸付け用は除外(R4年4月1日以降)
通常の減価償却20万円以上(特例外)固定資産
(工具器具備品・機械装置・車両など)、
減価償却費
法定耐用年数に従い定額・定率等で償却
※期中取得は月割り
減価償却明細
(特例)
中小・青色の少額資産特例
1点30万未満(中小企業者等・青色個人が対象)少額減価償却資産の特例として当期費用取得年に全額経費(年300万円まで)別表16(7)等の明細添付貸付け用は除外
事業年度が1年未満の場合は上限を月数按分

実務でつまずきやすい “判定のコツ”

「1単位ごと」に判定(セット品・部屋単位に注意)

 応接セットはテーブル+イスの1組で10万円未満かを判定します。
カーテンは部屋ごとの合計で判定します。

いずれも“ばらばら”ではなく「通常1単位として取引される単位」で見ます。

税込/税抜経理で10万円・30万円の線が変わります

 会社(事業者)が採用している消費税の経理方法で、判定金額は税込か税抜かが決まります。(免税事業者は税込判定のみ)

例)税込102,000円(税抜92,727円)の備品

税抜経理なら10万円未満→即時費用

税込経理なら10万円以上→一括償却や通常償却へ

「貸付け用資産」は特例・簡便の対象外

 10万未満・一括償却・30万特例の3制度とも、本業以外の貸付け用は除外(R4年4月1日以降)。賃貸用什器等を想定している場合は注意が必要です。

まとめ

 「10万円」はその年に一括で落とせるかどうかの分岐、「20万円」は一括償却の上限、「30万円」は中小・青色の即時費用化特例の上限となります。

 減価償却にしても最終的には購入代金のすべてが経費になりますが、お金を支払った年に全額経費にすることができません。その年に按分した金額だけが経費になります。赤字の場合には関係ありませんが、黒字の場合には残りの金額は翌年以降の経費になるので、残りの金額分の税金がかかることになってしまいます。そのため、消耗品費で処理した方が節税効果があります。

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